サマーコンサート Vol.1
~若きバイオリニスト達とプロバイオリニストによる共演~ イベントレポート

若きバイオリニスト達とプロバイオリニストによる共演
若きバイオリニストのみなさん

3月に開催を予定していたこのコンサート。
地震の影響で延期となりましたが、皆様のご協力のもと、無事に開催することができました。本当にありがとうございました。
この日のために準備をしてきた若きバイオリニスト達、そして江口氏と佐藤氏の心のこもったあたたかい演奏、音色、そして、それぞれが持つテクニックが絶妙に重なり、美しいバイオリン・サウンドがオーディエンスと会場全体に響きました。
そしてオーディエンスからの惜しみない拍手もまた、バイオリニスト達にとってかけがえのない瞬間だったに違いありません。

そんな優しさと笑顔に溢れたコンサートの模様をお伝えしましょう。

第一部 I Vn:森川 ひびき Pf:森川 こと

曲目:ラ・フォリア/コレルリ

フォリアは、イベリア半島起源の舞曲で3拍子の緩やかな音楽。「常軌を逸した」という意味があり、もともとは騒がしい踊りのための音楽であったことが窺われますが、時代を経て優雅で憂いを帯びた曲調に変化していきました。

森川ひびきさん(小学5年生)は、あらゆる技巧を尽くした変奏曲の名品とされるこの曲を 、冒頭の切なくも自信に満ち溢れた旋律を、ゆったりと体を揺らしながら奏で、中盤の「これぞ舞踏曲!」というリズムを前面に押し出した三拍子のピアノに合わせ、速いフレーズのテクニカル・セクション、終盤にかけては細かくスリリングに変わるリズムにも柔軟に対応し、終始安定した演奏で、美しいメロディを聴かせてくれました。

第一部 II Vn:佐藤 由梨花 Pf:友清 祐子

曲目:シャコンヌ/ヴィターリ

こちらも3拍子の変奏曲。バイオリン弾きなら一度は聞いたことのあるバロック時代の名曲の一つでもありますが、ゆったりしたリズムとはうらはらに、テクニカルなフレーズが満載の難しい楽曲でもあります。

演奏するのは小学5年生の佐藤由梨花さん。優雅なメロディの中でこまかくポジションチェンジし、低音から高音に駆け上がる速いフレーズにも素早く対応し、緩急のある素晴らしい演奏を聴かせてくれました。さらに、中盤から終盤にかけて、ピアノとの掛け合い、ユニゾンプレイなど、ピアノとの力強い演奏も特筆すべきポイントです。難しい曲にもかかわらず、彼女の楽しそうに弾く姿もとても印象的でした。

第二部 IV Vn:波多江 真里菜 Pf:佐々木 秋子

曲目:ヴァイオリン協奏曲3番1mov/サン・サーンス

学年が一つ上がって中学2年生の波多江真里菜さん。
彼女もまた美しくもテクニカル満載のこの楽曲をセレクト。ロマン派音楽において重要なバイオリンと管弦楽のための協奏的作品の一つですね。

この楽曲の聴きどころはなんといっても、ソプラノ歌手のような高音の響きと、1弦~4弦を行き来する速いフレーズですが、波多江さんの演奏は落ち着きがあり余裕さえ感じました。フレーズ毎の呼吸も、ピアノとの息づかいも絶妙で、ステージ上はバイオリンとピアノだけですが、フルオーケストラを思わせるスケールを感じました。

第二部 V Vn:伊藤 太郎 Pf:水村 仁美

曲目:ヴァイオリン協奏曲1番1mov/パガニーニ

これまでに数多くのコンサートに参加し、コンサートマスターを何度も務めた経験をもつ伊藤太郎さんは現在高校2年生。
パガニーニと言えば、「パガニーニの演奏技術は、悪魔に魂を売り渡した代償として手に入れたものだ」という話しが有名で、「24のカプリース」などの超技巧楽曲が取り上げられますが、伊藤さんは、軽快なリズムと明るい曲調のこの楽曲をセレクト。

体全体を使い、音符一つ一つを丁寧にかつ楽しさを表現し、中盤以降の高音でのテクニカルなフレーズもガツガツした感じがなく、逆に「甘く優しい音」に包まれた彼ならではの経験が生かされたバイオリンサウンドでした。激しいところは激しく、静かなところは静かにと、フォルテとピアノの表現も特筆すべきポイントです。

第三部 VII Vn:吉野 渉敬

曲目:無伴奏ソナタ1番/バッハ

今回参加した6名の中で唯一、無伴奏の難曲をセレクトした吉野渉敬さんは、多くのバイオリニストに師事し、また、海外のセミナーにも多数受講。たった一人でステージに上がるだけでも勇気がいることですが、彼は臆することなく落ち着きと堂々とした姿がとても印象的で頼もしくも感じました。

重厚な楽曲の中でも、繊細さが要になる前半部分では、音を包み込むかのように優しく弾き、観客をうっとりさせ、中盤から後半にかけての”雄大+技巧”を見事に弾ききり、実力を存分に発揮してくれました。
また、どの楽器の演奏者にとっても難しいとされる、「音符と音符の”間”」の使い方も絶妙で、ガラッと変わる瞬間も彼ならではの独特な”間”で、観客を魅了させました。

第三部 VII Vn:長嶋 萌 Pf:安田 里沙

曲目:カルメンファンタジー/ワックスマン

華かなドレスをまとい、笑顔で登場した今回最後のバイオリニスト、長嶋萌さん。彼女がセレクトしたこの楽曲は、タイトルから想像できる通り、奇想天外なストーリーを持つ楽しくもスリリングな曲です。

ピアノから始まるカルメンのテーマとも言えるメロディから始まり、次から次へと変貌するリズムとテンポ、演奏者の持ち味が発揮されるヴィブラート、重厚なハーモニー、そして、最後にして最大の盛り上がりをみせるピアノと繰り出す高速セクションへと会場全体を緊張感とスリルの世界へと染めていきました。
特にラストは観客の皆さん、ほんとは「ブラボー!」と言いたくなったのではないでしょうか?(笑) それほど、完成度が高く、しかも「聴く者を楽しませる」、そんなプロ気質にも似た、素晴らしい演奏でした。

江口有香氏と佐藤勝重氏の演奏動画

若き演奏者にとってもオーディエンスの皆さんにとっても、同じ空間で素晴らしい音楽と演奏を共にできる機会は数多くあるわけではありません。
もちろんコンサートに行けば聴けるものですが、プロバイオリニストと若き演奏者のエネルギッシュなサウンドを一度に体感できるのは下倉バイオリン社ならではのイベントです。

今回は特別に江口有香氏と佐藤勝重氏の演奏動画を公開させていただけることになりましたので、最後までお楽しみください。

【江口有香 プロフィール】

江口有香

3歳よりヴァイオリンを始める。 桐朋女子高等学校音楽科に在学中、 第55回日本音楽コンクールヴァイオリン部門にて第1位(1986年)。 その後渡米し、インディアナ州立大学音楽学部に入学。  同大学を卒業後、同年パガニーニ国際ヴァイオリンコンクール第3位(1993年)。 帰国後は、NHKFMリサイタル、新日鉄プロミッシングアーティストシリーズリサイタルなどに出演。   ソロ活動の他、アンサンブル活動や後進の指導にもあたるなど、幅広く活躍中。 現在、日本フィルハーモニー交響楽団コンサートマスター、 トウキョウ・モーツァルト・プレーヤーズコンサートマスター、桐朋学園子供のための音楽教室非常勤講師、みたかジュニアオーケストラ講師。
師事歴 蔵持典与、安田広務、故・鈴木鎮一、小林健次、故・J.Gingold、 故・F.Gulli 、 Yuval Yaron、 室内楽を J.Starker, 故・G.Sebok
発売中のCD 「ツィゴイネルな世界」「ヴィラ=ロボス・vl.ソナタ集」(Pf.村上巌)「小品集メヌエット」(Pf.渡邊一正)「無伴奏ヴァイオリン名曲集・庭の千草」「ジャパニーズ・チルドレンズ・ソング」(編曲・守田裕美子)「チェロとヴァイオリンのための二重奏曲集」(Vc.江口心一) いずれも徳間ジャパン(ドイツシャルプラッテン)より


【佐藤勝重プロフィール】

佐藤勝重

桐朋女子高等学校音楽科(共学)を首席で卒業後渡仏。その後パリ国立高等音楽院を
1等賞、パリ・エコール・ノルマル音楽院の高等演奏家課程を賞賛つき満場一致で卒業。
これまでに福岡幸子、江戸弘子、G.フレミー、G.ムニエの各氏に師事。この間、全日本
学生音楽コンクール全国大会優勝やSOFIA国際ピアノコンクール第1位受賞など、国内外
のコンクールに入賞する傍ら数多くのコンサートに出演。また、2000年にはワルシャワで
行われた第14回ショパン国際ピアノコンクールに日本代表として推薦出場を果たし、その後ショパンを中心としたリサイタルを全国各地で開催しており、海外では、フランスのショパン・フェスティバル(パリ)、ルーマラン城(南プロヴァンス)、フォーラム・ミュージカル(ノルマンディー)などの音楽祭への出演やシャン・シュール・マルヌ城での定期演奏会に加え、ブルガリアでのリサイタルを大成功におさめるなど、国内外で意欲的な活動を行っている。
近年はアレクセイ・トカレフ(元レニングラード交響楽団首席トランペット奏者)や高木和弘(東京交響楽団コンサートマスター)とのデュオで全国各地で演奏会を行い、また、国際オーボエコンクール(軽井沢)公式ピアニストやラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭、創立160年を迎えるフランスの名門吹奏楽団(パリ・ギャルド・レピュブリケンヌ)で唯一の邦人ピアニストとして全国ツアーと韓国公演に参加するなど、様々な分野で幅広い音楽活動を展開している。
これらの演奏以外にも音楽雑誌への執筆やセミナーでの講義、コンクールの審査員なども
行い、桐朋学園音楽大学非常勤講師、昭和音楽大学にて後進の指導にも力を入れている。

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